子宮頸癌予防のワクチンのお知らせ


2009年12月22日より子宮頸癌予防のワクチン“サーバリックス”が販売され、2011年9月より“ガーダシル”という2種類目の子宮頸癌予防ワクチンが発売されました。
日本では年間で約15,000人が子宮頸癌に罹患され、約3,500人の患者さん方が亡くなられています。その罹患率は、20〜30歳代で急増しています。
その子宮頸癌の発症の主要な(約70%の関与)原因である「発ガン性ヒト・パピローマウイルスHuman Papilloma Virus(HPV)」の16型と18型(ガーダシルは+6,11型)の感染を予防するワクチンです。

ヒト・パピローマ・ウイルスは、100以上の型が同定されており、性器疣贅・乳頭腫(良性の上皮増殖)や子宮頸癌の発症に関連しています。手背(手の甲)などにできるイボもこのウイルス感染によるものです。
性器や子宮頚部への感染は、主に性行為によって伝播し、免疫能が発症や再発に影響し、病変が出現したり消失したりすることがみられます。

1.HPVとは?
 φ45〜55nmの比較的小型のDNAウイルスで、パルボウイルス科に属し、様々な腫瘍の発生に関与するポリオーマウイルスと同属です。
 100以上の型(type)があり、子宮頸癌と密接に関連する‘高危険群’(high risk group)、発癌と直接関連しないとする‘低危険群’(low risk group)、その中間に位置する‘中間群’があります。
 ※high risk group:type 16,18,31,33,35,45,52,58

2.HPV感染と発癌機構
 HPVの‘E-6とE-7’という領域が作るタンパク質の作用で、細胞のリズムを狂わせ(細胞が勝手に増殖する)、その結果発癌します。
E-6:癌抑制遺伝子P-53蛋白と結合し、異常な増殖や核分裂を起こします。
 E-7:癌増殖遺伝子を抑制するRB(retinoblastoma)蛋白と結合し、結果癌増殖遺伝子の働きを促します。
 発癌には、高危険群ウイルスが長期にわたって感染していることが必要で、どのような条件下に特定の個人に長期に感染するのかはわかっていません。

3.HPV感染の実状と自然史
 我が国でのHPV感染率は、10〜20%といわれてきていますが、最近若年者を中心に増加傾向が指摘されています。
 15〜19歳:50%
 20〜24歳:約35%
 25〜29歳:約20%
 30歳〜:約10%
 性交渉の人数と感染率の関係は、
     0〜1人:20%以下
     2〜3人:約30%
     4人:40%
     5人以上:53%
 でした。
 HPVは、どこにでも存在するウイルスで、感染しても自然消失してしまいます。感染率のデータはその時点での数値(状態)であり、人の生涯で見てみると、最低でも70%の人は感染歴があると述べられています。
 HPV感染の自然史は、「どこにでも存在するウイルスが日常生活で自然に感染し、症状を呈する事なく消失する」と言えます。

4.HPVワクチン
 HPVが子宮頸癌の主な原因と解明されるのと平行して、子宮頸癌発症予防を目的にワクチン開発が進められてきています。HPVのDNAを包むタンパク質の殻のみ(HPV-DNAを含まないカプシドのみ)のVirus Like Particleを作り、これによりワクチンを作製しています。
  1. Cervarix(Glaxo Smith Kline社)
      HPV16&18
    ワクチンで、この接種によりHPVの偶発性感染の91.6%、持続感染の100%予防ができた。
    • 独自のアジュバント(免疫増強剤)は、水酸化アルミニウムにAS04を加えることにより、自然感染の11倍の抗体価を長期維持(予防効果の持続期間は確定していません)。
    • HPV16型と18型の持続感染、HPV16型もしくは18型が関与する前癌病変(子宮頚部異形成と上皮内癌)の発症を、92.3〜100%予防と報告しています。
  2. Gardasil(MSD)
      追いかけワクチンデータあり。
      HPV 6,11,16&18ワクチンで、遺伝子組み換え型ワクチンで生ウイルスを含んでいません。
    • このワクチン接種群でのHPV感染率は非接種群より90%低かった(未感染例では、ほぼ100%)。
    • ワクチン接種後平均17ヶ月の追跡で、接種群では子宮頚部の前癌病変または侵襲性癌(CIN 2&3 and AIS)は検出されなかったが、非接種群では21例で病変が検出されたとしています。
      その後の予防効果は、HPV16/18関連の子宮頚部扁平上皮癌の前駆病変CINと頚部腺癌AISに対して96.9〜100%、HPV6/11/16/18に関連した尖圭コンジローマは100%でした。
    • Catch-up vaccination(追いかけワクチン)では、一般診療でHPVの有無等を無視してワクチンを接種した場合ですが、その有効性は17〜30%の低値であったとの報告があります。
    • 以前HPVに感染していて現在感染所見がみられていない症例において、ワクチン接種によりその後の発症予防効果を認めています。
    • ガーダシルに使用されているアジュバント剤は、アルミニウムヒドロキシフォスフェイト硫酸塩を用い、同剤は多くの小児・成人用ワクチンに使用されています(本剤も予防効果の持続期間は確定していません)。

サーバリックス
 ワクチン接種対象と接種方法
  接種対象:10歳以上の女性
  接種方法:1回0.5mlを、0,1,6ヶ月後に3回、上腕三角筋部に筋肉内接種します(総計で約5万円)。
  副反応(国内データ)
  1. 重大な副反応
    ショックまたはアナフィラキシイー様症状を含むアレルギー反応、血管浮腫があらわれることがあります。全ての薬剤やワクチンに予想されるもので、頻度は不明ですが稀です。
  2. 局所(注射部位)反応
    疼痛(99%)、発赤(88.2%)、腫脹(78.8%)
  3. 全身性反応
    疲労(57.7%)、筋肉痛(45.3%)、頭痛(37.9%)、胃腸症状(悪心、嘔吐、下痢、腹痛等)(24.7%)、関節痛(20.3%)、発疹(5.7%)、発熱(5.6%)、蕁麻疹(2.6%)
上記症状は、軽度〜中等度で、3回の接種スケジュールへの影響はなかったようです。

ガーダシル
 サーバリックスとの違いは、2種のワクチンに対して、4種のワクチンで構成されている他、接種時期とアジュバント剤の違いがあります。
 ワクチン接種対象と接種方法
  接種対象:9歳以上の女性
  接種方法:1回0.5mlを、0,2,6ヶ月後に3回、上腕三角筋または大腿四頭筋に筋肉内接種します(総
  計で約5.3万円)。
   また、接種時期のずれによる効果の変化は、1〜2ヶ月(2、3回目の接種)は影響しません。
   自費接種での料金は、サーバリックスの料金より1000円/回お高くなります。
  副作用:サーバリックスと余り変わりませんが、やや頻度的には少ないとされています。
  海外では本剤は男性にも接種可能とされていますが、日本では女子のみの接種で許可されてい
  ます。海外の報告(USA、ブラジル、メキシコ)では、一般男性の約50%でHPV感染が確認されてい
  ます。

2剤共に予防効果の持続期間は、はっきり言えませんが、現在の時点で『7〜8.4年』と報告されています。
上述でおわかりのように、“性生活の経験の無い女性へのワクチン接種は、非常に効果的ですが、現在子宮頚部異形成でフォローアップを受けられている患者さん方では限定的”と考えられます。

このワクチン接種は完全予約制です。ワクチンは高価であり、その効果と副反応等を十分考慮されてお申し込み下さい。

なお、現在日本において、「HPV 16型に対する乳酸菌を担体とする経口ワクチン」が開発されつつあり、実用化が待たれます。



4価HPVワクチンと2価HPVワクチン
種類4価HPVワクチン
(ガーダシル)
2価HPVワクチン
サーバリックス
含有HPV VLP
(抗原量)
6,11,16,18型
(20μg,40μg,40μg,20μg)
16,18型
(20μg,20μg)
抗原発現系酵母イラクサギンウワバ細胞
アジュバントアルミニウムヒドロキシホスフェイト
硫酸塩
水酸化アルミニウム+MPL(AS04)
MPL:Monophosphoryl Lipid A
投与方法/接種部位筋肉内注射(0,2,6ヵ月目)
上腕三角筋又は大腿四頭筋
筋肉内注射(0,1,6ヵ月目)
上腕三角筋
接種対象者9歳以上の女性10歳以上の女性
適応症HPV6,11,16,18型による
以下の疾患の予防
>子宮頸癌(扁平上皮細胞癌、腺癌)
>子宮頚部上皮内腫瘍(CIN)1,2,3
>子宮頚部上皮内腺癌(AIS)
>外陰上皮内腫瘍(VIN)1,2,3
>膣上皮内腫瘍(VaIN)1,2,3
>尖圭コンジローマ
HPV16,18型による
以下の疾患の予防
>子宮頸癌(扁平上皮細胞癌、腺癌)
>子宮頚部上皮内腫瘍(CIN)2,3
世界シェア約80%約20%
男性への適応世界13ヵ国で承認なし


4価HPVワクチンと2価HPVワクチン
評価ポイント評価4価HPVワクチン2価HPVワクチン
子宮頸がん予防効果2価、4価ともに十分な予防効果が確認されている。
※抗体価が高い=予防効果が高いわけではない。
その他の
HPV疾患予防効果
4価のみAIS、CIN1、VaIN1/2/3、尖圭コンジローマに対する予防効果が確認されている。×
長期予防効果2価は最長8.4年(第II相延長試験)、4価は最長7年(第III相延長試験)の長期予防効果が確認されている。
※いずれも現時点で長期予防効果は限定的
安全性2価よりも4価の方が局所および全身性の副反応が総じて少ないことが報告されている。
価格2価、4価ともに希望販売価格および公費助成額は同じである。
世界での使用実績世界では4価が80%以上のマーケットシェアを占めている。


2011年10月   よこすかレディースクリニック