緊急避妊法 Emergency Contraception(EC)とは?

1.緊急避妊法ECとは?
 緊急避妊法ECとは、「避妊措置に失敗した、または避妊措置を講じなかった性交Unprotected Sexual Intercourse(UPSI)後に緊急的に用いるものであり、通常の経口避妊薬のように計画的に妊娠を回避するものではない、最後の避妊手段です。

 「性交後避妊」、「モーニング・アフター・ピル」ともいわれています。

(1)種類
  @ホルモン配合剤の服用
   a)Yuzpe(ヤツペ)法---1970年代より、わが国で最も一般的に使用されてきた方法です。
    UPSI後72時間以内に、中等量ピル(一般名プラノバール)を2錠、その12時間後に2錠を服用
    するものです。この方法による妊娠率は、2〜3%余りと報告され、副作用としては約半数の方
    で悪心が、約15%の方に嘔吐が出現しています。
   b)『レボノルゲストレル(LNG)単剤』---今回承認された方法です。
    性交後72時間以内に、LNG単剤0.75mg錠を確実に2錠服用します。服用者の3.6%に悪心が
    みられます。
  A銅付加子宮内避妊具 Copper-bearing Intrauterine Device(Cu-IUD)
   UPSI後5日以内に装着します。
   装着が排卵後5日を超えない限り、性交後5日を越えても装着してよいとされます。また、失敗
   率は1%未満です。

(2)作用機序
  @ホルモン配合剤
   作用機序は充分に解明されていませんが、主に着床の阻害よりも排卵の抑制あるいは排
   卵の遅延によるもの
と考えられています。
   LNGを排卵前に投与することによって、その後5〜7日間排卵が抑制され、その期間に女性の
   性器内に侵入している全ての精子が受精能力を失うこととなります。
  ACu-IUD
   Cu-IUDが銅イオンによる精子の運動性に対する直接作用によって受精を阻害することは広く
   知られており、受精前及び受精後の両方に効果があります。
   受精が起こったとしても、子宮内膜の異物による炎症反応が着床阻害作用を示す可能性があ
   り、さらに子宮頚管粘液の銅含有量が変化し、精子の侵入が阻害されると考えられています。

2.緊急避妊法の適応
  (1)避妊をしない性交後
  (2)経口避妊薬の服用忘れや下痢などによる吸収障害
    @経口避妊薬を服用する1週目(1〜7日目)に3錠以上飲み忘れた場合
    A飲み始めるのが3日以上遅れ、しかもこの期間にUPSIがあった場合
  (3)レイプや性的暴行後
  (4)膣外射精に際しての外陰部への射精
  (5)コンドームの破損・脱落・不適切な使用
    その他の避妊具の不適切な装着・破損・脱落
  (6)性交後8時間以内での避妊用ペッサリーの除去

3.レボノルゲストレル(LNG)単剤
  性交後72時間以内にLNG単剤0.75mg錠を確実に2錠服用します。
  Yuzpe(ヤツペ)法に比べて服用も簡単で、副作用も軽度です。
 Q.1:性交後72時間を超える場合の使用は?
   72時間を超えてのLNGの使用は、用法用量の適応外ではありますが、妊娠率を低下させる可
   能性はあります。確率は不明です。
 Q.2:月経周期の中に2回以上LNGを服用したら?
   繰り返ししようすることは可能ですが、月経周期が乱れる可能性があります。
   既に妊娠されていた場合、本剤の反復投与により流産が誘発されることは無く、本剤投与後12
   時間以内のUPSIに対して新たな本剤の服用は必要ありません。
 Q.3:副作用は?
   本剤服用後の嘔吐は殆どみられず、服用者の3.6%に悪心がみられます。
   LNGの服用後2時間以内に嘔吐した場合は直ちに2錠を追加服用します。
   本剤服用後、月経周期の乱れがみられ、16%の方では予定月経とは無関係に治療後7日以内
   に出血がみられます(LNG服用後、約3週間以内に消退出血をみることが多い)。
   主な副作用は、消退出血(46.2%)、不正性器出血(13.8%)、頭痛(12.3%)、悪心(9.2%)、
   倦怠感(7.7%)、傾眠(6.2%)などがみられています。
   海外では上記に加えて、疲労感(14%)、下腹部痛(14%)、めまい(10%)、乳房圧痛(8%)、
   月経遅延(5%)などもみられています。
 Q.4:服用禁忌と慎重投与は?
   禁忌
    @本剤成分に対して過敏症の既往歴がある方
    A重篤な肝障害のある方
    B妊婦
   慎重投与
    @肝障害のある方
    A心疾患、腎疾患またはその既往歴のある方
 Q.5:併用を避ける薬剤は?
   低用量ピルと同様です。
 Q.6;性交後72時間を超えてしまった場合の対処法は?
   本剤投与に関して、わが国の添付文書では「72時間以内の投与」となっていますが、120時間
   までであれば効果が期待できるとされています(99〜84%から63%へ減少)。しかし、服用までの
   時間が遅くなればなる程避妊効果は減弱します。
   本剤投与後は、80%以上の方が、「予定月経の日の前、または予定月経2日後以内」に月経が
   みられ、95%の方が予定月経の7日後以内に月経がみられます。
   よって、月経が予定より7日以上遅れたり、通常よりも軽い月経であった場合には妊娠検査を
   受けて下さい。

4.Yuzpe(ヤツペ)法
 我が国で最も一般的に行われてきた方法が、Yuzpe法です。
 UPSI後、72時間以内に「前述のプラノバールを2錠、更にその12時間後に2錠服用」する方法で
 す。本法による妊娠率は、2.6〜3.2%で、悪心(50.1%)、嘔吐(14.8%)のほか下腹痛、頭痛、だるさ、
 下痢なども低率ながらみられています。
 Q.1:本剤服用に際して、悪心・嘔吐を防ぐために制吐剤を使用するか?
   本法での悪心・嘔吐出現率は多少高いですが、全ての方が経験されるわけではなく、制吐剤
   の使用は一般的ではありません。
 Q.2:本剤服用後、嘔吐した場合はどうするか?
   服用後2時間以内に嘔吐した場合、出来るだけ速やかに本剤を1回分追加服用して下さい。
   服用後2時間が経過していればホルモンは十分吸収されており、その後の嘔吐では追加投与
   は不要です。
 Q.3:本剤服用後に注意することは?
   本剤服用にて排卵を遅らせることがありますので、次回月経までは、本剤服用した翌日から21
   日間はきちんと避妊してください。

5.銅付加子宮内避妊具 Copper-bearing Intrauterine Device(Cu-IUD)
 Cu-IUDは主として受精前に精子の運動能力を低下させるといわれており、挿入後直ちに効果を
 発揮すると考えられます。Cu-IUDは既に受精が起きている場合には着床阻害があります。
 IUDを用いる緊急避妊法として一般にCu-IUDが用いられますが、UPSI後5日以内に装着しなけれ
 ばなりません。装着が排卵後5日間を超えない限り、性交後5日を超えて装着しても効果がありま
 す。
 なお、通常の避妊法としてCu-IUDを使用した場合の妊娠率は非常に低く、
 ‘5年以上で<20/1000’です。
 性感染症が疑われる方の場合、クラミジア感染症の検査をすることが望ましいが、その結果を
 待って必要以上にCu-IUD装着を遅らせないため、抗生剤の予防投与が推奨されます。

 Q.1:副作用は?
   骨盤内感染症の発症割合は、年間1000人に1.6人と低いものです。
 Q.2:禁忌は?
   通常のIUDの挿入の場合と同様で子宮筋腫や子宮内膜炎等がありますが、殆どの方々におい
   てCu-IUDの使用による利益がリスクを上回っています。
   性感染症のリスク、過去の異所性妊娠、若年、未産婦などは、Cu-IUD使用の禁忌とはなって
   いません。
 Q.3:併用薬剤の注意点は?
   併用薬剤の影響は受けません。
 Q.4:Cu-IUDを使用した後は?
   月経以後UPSIが無い場合、または月経周期の5日以内にホルモン避妊法を始めた場合には、
   妊娠のリスクがないため、次の月経後にもCu-IUDを取り出して結構です。
   緊急避妊用Cu-IUD挿入後月経がない方は、妊娠していないことが確認されれば3週間後に
   Cu-IUDを抜去することができます。
   緊急避妊用Cu-IUDを挿入した方は、通常の避妊法としてそのCu-IUDを装着し続けても結構で
   す。その場合、定期的なフォローアップを受けて頂き、「腹痛、腰痛、発熱、月経周期の乱れ、
   不正出血、無月経等がみられた場合、医師に相談して下さい。

緊急避妊法ECの種類と特徴
 Yuzpe法レボノルゲストレルCu-IUD
使用法性交後72時間以内に、ピルを2錠、その後12時間後に2錠服用性交後72時間以内にピルを2錠服用性交後5日以内にIUDを装着
副作用主に、悪心・嘔吐悪心(±)骨盤内感染症(±)
価格6〜7000円18000円前後4〜50000円